2025/06/06

【コラム】今の時代に思う、「心安らぐ酒を届ける」ということ

「5年連続で金賞受賞」という栄冠の陰にあったもの


200年の歴史を誇る酒蔵・玄葉本店。田村市船引町に佇むその小さな蔵こそ、今酒好きの間で注目を集める銘酒「あぶくま」が作られている場所です。

全国新酒鑑評会で5年連続金賞受賞という輝かしい実績を持つ玄葉本店ですが、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。2001年に先代の蔵元が高齢であることを理由に廃業を決意し、酒蔵はそこで文政から続く歴史に終止符を打つかに思われたのです。

その流れを変えたのが、先代の息子で当時は東京の商社で働いていたという現蔵元の玄葉祐次郎さんでした。自身が生まれ育った蔵を守りたいという想いから、地元に戻って酒蔵を継ぐことを決意します。

そうは言っても当初酒造りの知識が何も無かった玄葉さんは、まず杜氏の元で修行を始め、さらに酒類総合研究所と県の清酒アカデミーで酒造りの理論と技術を学びました。同世代の造り手たちに経験値や知識で大きく遅れをとっている現実を嚙み締めつつ、それでもときに彼らに励まされることで、必死にブランクを埋めていったという玄葉さん。基礎的な知識を習得した後、いよいよ玄葉本店が誇る酒「あぶくま」と向き合うことになります。

それまで世界を舞台に活躍していた玄葉さんが、福島の小さな蔵の中で酒と向き合う日々。「良い酒を造る」というその一点に集中した玄葉さんの情熱は、周囲も驚く奇跡を起こしました。

それまで何の実績も持たなかった玄葉さんが初めて醸した「あぶくま」が、見事に全国新酒鑑評会で金賞受賞という名誉を得たのです。

さらにその2年後に玄葉さんが杜氏となってから、新たな「あぶくま」は見事5年連続で金賞を受賞します。一時は廃業寸前だった玄葉本店は、酒蔵を想う玄葉さんの努力と情熱によってその歴史を次の時代へとつなぐことができました。

 

美味しい食事と至極の一杯で、疲れやストレスを洗い流して


そんな玄葉本店が誇るブランド「あぶくま」ですが、その口当たりは優しく、上品で控えめな印象を与えます。口に入れた瞬間その味に感嘆するというよりも、ゆっくりしみじみと日本酒の旨味が身体に染みわたっていくようです。

玄葉本店のお酒をどんな人に届けたいかと尋ねられた玄葉さんは、こう語ります。
「今の時代は皆さまざまなストレスに悩まされています。だから人が仕事を終えて家に帰ったとき、『あぶくま』を飲んで癒されてほしいのです」
その言葉どおり「あぶくま」には、疲れた心からストレスを洗い流し、ホッと心が安らぐような美味しさがあります。

また「あぶくま」を造るときには良き食中酒であることを目指している、と語る玄葉さん。料理の邪魔をするような主張の強いお酒は造らず、そっと寄り添って引き立てるような味。それでいて日本酒単体で飲んでも奥深い味わいで、バランスのとれた一杯を目指して。だからこそ「あぶくま」は県民の日々の生活シーンに溶け込み、いつでも気ままに楽しめるお酒となっているのです。

派手なお酒を目指すよりも、米の旨味を引き出すことに真面目に取り組む。その姿勢も日本酒好きから高い評価を受けている、今大注目のブランドです。玄葉本店の「あぶくま」は、森株式会社の公式オンラインショップでいつでも購入できます。鑑評会でその実力を認められた福島の銘酒、ぜひチェックしてみてください!

玄葉本店【福島県田村町】